(続き)

「おはよー・・・」 
「おはよう加奈ちゃん、今日も寒いね」 
その日は、一月下旬の今にも雪が降り出しそうな曇天の空模様だった。 
そんな天気が、ただでさえ憂鬱な加奈の心をさらに沈ませる。 
今日は、加奈が一週間でもっとも気が重い、木曜日だった。 

3年生のこの3学期から、毎週木曜日が6時間授業になった。 
4年生になると6時間授業が本格的に始まるので、その予行演習的なものであった。 
もちろん他の子達も、学校に拘束される時間が1時間ほど増える6時間授業は、あまり嬉しくなかったが、 
その1時間は、加奈にとって他の子とは比べ物にならないほどの、まさに死活問題であった。 

(今日も一日、ガマンできるかなぁ・・・) 

加奈は、小学校に入学して以来3年間、一度も学校のトイレを使ったことがない。いや、使えないのだ。 
加奈には、どうしても自分の家のトイレしか使えないという難点があった。 
入学したての1年生最初の頃は、毎日おもらし寸前で家に帰り、トイレに飛び込んだものだった。 
しかし、毎日のガマンで慣れてしまったせいか、それとも身体の成長につれ膀胱も大きくなっていったのか、 
学年が進み、授業時間が長くなっても、これまでなんとか学校でのお漏らしはせずに済んでいた。 

しかし、新学期に入っての6時間授業は、加奈にとってはかなり苦しいものであった。 
3学期はこれまで2度、その6時間授業があったのだが、2度とも加奈はまるで1年生の頃のように 
おもらし直前まで追い込まれ、家のトイレにギリギリで間に合っていた。 
だから今朝は朝食のときも一切水分を摂らず、登校直前にトイレで最後の一滴までおしっこをしぼり出してから来たのだった。 

朝のHRの時間であるが、加奈のいる3年2組はざわついていた。 
担任の石崎先生がまだ来ないのだ。 
「加奈ちゃん、先生遅いね。どうしたのかな?」 
「さぁ・・・? ひょっとして、先生が遅刻して来たりして」 
などと、隣の席の友達と喋っていると、教室の前の扉が開いた。 
しかし、入ってきたのは担任ではなく、1組の神田先生であった。 
「はいはい、静かにー! えー、石崎先生は今日、風邪を引いてしまわれたそうで、お休みされるそうです。 
 なので、今日の2組の授業は、手の空いた他のクラスの先生が交代でやります」 

その日の授業は、プリント学習が中心となった。 
「静かに自習するように」と先生は言って、自分の受け持ち学級に戻るのだが、そんなことを小学3年生が聞くわけもない。 
午前中だけで、授業中2度も隣のクラスの先生に「静かにしなさいって言ってるでしょ!」と怒鳴られてしまった。 

そして4時間目が終わり、給食の時間がきた。 
それは加奈にとって、悪夢のような午後の始まりだった・・・。 

その日の給食の献立は、ごはん、ハンバーグ、野菜炒め、そして玉子スープと牛乳であった。 
加奈はいつもどおり、おしっこがしたくならないようにスープと牛乳には手をつけず、他のものだけを食べていた。 
そして、給食時間も終わりに差し掛かったときだ。 
食器を片付けようと、加奈が残飯入れにスープと牛乳を捨てようとしたときに、3組の福田先生が、見回りにやってきた。 
と、スープを捨てかけた加奈を見た福田先生は、 
「ちょっと、上原さん!」 
と、加奈を止めた。 
(しまった)と加奈は思った。福田先生は、30代後半の女の先生で、ややヒステリックな感がある。 
加奈は、この福田先生が苦手だった。 
「あなた、このスープ全然口を付けて無いじゃないの。あら、それに牛乳も! だめよ。席に戻って、それを飲みなさい」 
「えっ、で、でも・・・」 
「でもじゃありません!」 
思えば福田先生の授業が、加奈のクラスが騒いでいたために何度も妨害され、不機嫌だったのだろう。 
「このスープだって、牛乳だって、一生懸命働いて作った人がいるのよ。その人たちに悪いと思わないの? 
 それに世界には、食べたくても食べれない人たちだっているのよ! さあ、分かったら席に付いて全部飲みなさい!」 
有無を言わせぬ感じで、福田先生はまくし立てた。加奈は観念するしかなかった。 
福田先生が教室から出て行ってから、こっそり捨てようかとも思ったが、先生は教卓に腰を降ろし、こちらに睨みを利かせている。 
結局、加奈はスープと牛乳、全てを飲み干すしかなかった・・・。 

給食、昼休みが終わり、掃除の時間になった。 
加奈の班はこの日、校庭の掃除当番であった。 
「加奈ちゃん、どうしたの? なんか顔色悪くない?」 
友達が心配そうに聞いてくる。 
「う、ううん。何でもない、大丈夫だよ」 
そう答えるよりほかなかった。 
しかし、加奈は気が気ではなかった。 
スープと牛乳を飲んでから1時間弱、それらが確実におしっこになっていくのを感じていた。 
ひょっとしたら、気のせいなのかも知れない。が、「水分を摂ってしまった」という事実から、 
加奈はいつも以上に、自分の尿意に神経質になっていた。 

掃除の時間に家に帰って、家のトイレでおしっこをしてこようか、とも考えた。 
しかし、学校を抜け出すわけにもいかないし、学校から加奈の家までどんなに急いでも、 
往復40分は掛かってしまう。5時間目に間に合いそうになかった。 

(学校が終わるまで、おしっこがもれませんように) 
と、神様に祈るしかなかった。 

5時間目の授業が始まった。現在13:45。 
6時間目終了の15:20まで、あと1時間35分。帰りの会や下校時間を含めれば約2時間。 
加奈のおしっことの闘いが始まった。 

5時間目が始まって15分。 
おなかの中のおしっこが、だんだん加奈を苦しめだした。 
(どうしよう・・・こんなに早くきちゃった・・・) 
加奈がいま感じている尿意は、先週なら6時間目の始めごろの感覚だった。 
先週よりも40分も早いペースでおしっこが溜まっている、という事だ。 
加奈は、先週の事を思い浮かべた。あのときだって、家のトイレにたどり着いたのはギリギリだった。 

いや本当のことを言えば、先週は学校から家にたどり着く迄の下校中、ガマンできず何度かパンツの中にチビってしまった。 
なんとか大洪水になる前にトイレに駆け込み放尿した後、加奈は母に見つからないようにこっそりとパンツを穿き替えた。 
おしっこでぬれてしまったパンツは、バレないようにと、洗濯かごの奥のほうに突っ込んでおいた。 

先週ですら、そんな調子だったのだ。ましてや今日は牛乳とスープを飲んでしまっている。 
(なるべく、おしっこのことは考えないようにしなきゃ) 
気を紛らわせようと、加奈は窓の外に目を向けた。 

(あ、雪だ・・・) 
窓の外では、いつのまにかしんしんと雪が降りだしていた。 
そういえば今朝やっていたテレビの天気予報で、今日はこの冬一番の寒さになるだろう、といっていた。 
だから今日加奈はパンツの上から防寒用にブルマを、さらに白いタイツを穿いたうえで、スカートを着ていた。 
しかしそれでも、暖房器具など無い教室である。寒さが加奈を襲い、身体がブルッと震えた。 

寒いと汗が出ず、体内に水分が溜め込まれてしまう上、膀胱の筋肉も収縮してしまい溜められるおしっこの量が少なくなる。 
そんな理屈は知らなかったが、加奈は経験上、寒いとおしっこが近くなるのは知っていた。 

5時間目が終わった。 
休み時間、加奈は女子トイレの前で小さく足踏みをしていた。もはや、じっと立っていることができないのだ。 
他の女子たちが、トイレの前で明らかにおしっこがしたそうな仕草の加奈を、不思議そうに見ながらトイレへと入っていく。 
そして、スッキリとした顔でトイレから出てくるのだ。 
(ああ、あたしもトイレでおしっこしたいよう。・・・でもぉ・・・・・・) 
学校が終わるまでまだ1時間以上。加奈はそこまでガマンできる自信は無かった。入学してから、史上最大のピンチである。 
しかしこの期に及んで、加奈はまだ学校のトイレを使う決心がつかなかった。 
学校のトイレは和式である。物心ついたときから、加奈は家の洋式トイレでしかおしっこしたことが無い。 
加奈は一応、知識として和式便器での用の足し方は知ってはいたが、きちんとできるかは分からない。 
そのことが、加奈の決断をさらに鈍らせていた。 
(早くしないと・・・でも・・・ああ、おしっこぉ・・・・・・) 

━━キーンコーンカーンコーン━━ 

加奈は決断できないまま、チャイムが無情にも鳴り響いた。 
(どうしよう、ガマンできるかなぁ・・・。いや、ガマンしなきゃダメ!) 
そう自分に言い聞かせるようにして、教室へと戻っていった。 

『今までだってガマンできたんだから、今日もきっと大丈夫』 
そう思いつつ席についた加奈だったが、六時間目も中盤に差し掛かる頃には、そんな甘い考えは吹っ飛んでしまった。 
(あっ、でちゃう、でちゃうよ) 
このままでは家に着くまでに、いや、この授業中にも、もらしてしまいそうであった。 
この六時間目は自習ではなく、時間の空いていた先生が授業をしに来たので、教室はしーんとしている。 
だから加奈もじっと座っていようとするのだが、身体が勝手にもぞもぞと動いてしまう。 
おしりを左右に揺すってみたり、机の下で足を上下させたり、右手と左手を交互に股間に持っていったり・・・。 
そんなことをしながら、幾度となくやってくる尿意の波を、なんとか押しとどめていた。 
(どうしよう、どうしよう) 
加奈の頭の中は、おもらしへの恐怖で、一種のパニックになっていた。 
強烈な尿意のために働かなくなっている頭で一生懸命に考え、何とか打開策を立てようとする。 
だがいくら考えても、どうしようもない。まさか、 
「先生、おしっこがもれそうなので、早退させてください」 
と言うわけにもいかない。 
学校のトイレに行けない以上、家に帰るまでガマンを続けるしかないのだ。 

さっきからチラチラと何度も見ている時計の長針が、やっと頂上に達した。15:00。 
(授業が終わるまで、あと20分・・・) 
実際はそのあと帰りの会があり、それから家まで帰らねばならないのだが、とりあえずの「目標」を決めておかないと、 
今にも噴きだしそうなおしっこに、屈してしまいそうだった。 

おなかが、痛い。病気の時の腹痛とは違う、うずくような鈍い痛み。 
その苦痛から逃れて楽になろうと、何度も 
(もう、どうなってもいい・・・ここでおしっこ出したい・・・) 
という考えが頭をよぎってしまう。だがその度に、 
(だめだめ! 3年生にもなっておもらしなんて絶対ダメ!) 
と、なんとか我に返り、ガマンを続けていた。 

加奈の机の上には教科書とノートが広げて置いてある。 
しかし、開いてある教科書のページは、今進んでいる内容の3ページも前であり、ノートは真っ白であった。 
もう鉛筆を握る余裕なんて無い。両手を股間に挟み込み、目をギュッとつぶっている。 
(おしっこ、おしっこ、はやく、もれちゃう、おしっこ・・・) 
と、うわ言のように呟いていた。 
時計は15:15を指している。あと5分だ。 

ゴトン! 

突然、教卓の方で大きな音がした。先生が黒板消しを取り落としたらしく「すまんすまん」と拾っている。 
しかし、おしっこガマンに全神経を集中していた加奈の身体は、その音に『ビクッ』と反応してしまった。 
そして・・・ 
『じわり・・・』 
(しまった!) 
とうとう、最初の「決壊」が始まってしまった。 
とっさに両手に力を込め、太股をギュッと閉じたので、なんとかおしっこはすぐに止まった。 
ほんの2,3滴、パンツの股布部分を少し湿らせただけだった。 
だが、一度出口を見つけたおしっこはそれではおさまらず、なんとかその扉を再びこじ開けようとする。 
『チュッ、チュルルッ』 
その圧力に耐え切れず、加奈はもう一度、二度、おチビリをしてしまった。 
(やっ、いやっ。止まってっ・・・) 
全身を固く強張らせ、巨大な尿意の波をやり過ごそうとする。 
・・・・・・・・・・・ 
(はあ、はあ・・・) 
なんとか、その大ピンチを凌ぐことができた。 
だが、加奈の身体の中に残った大量のおしっこが出てきてしまうのも、時間の問題だ。 
(はやく、はやく終わってぇーっ!) 

━━キーンコーンカーンコーン━━ 
6時間目終了を告げるチャイムが鳴り響く。 
(やった!) 
と、加奈は顔をあげた。と同時に、 
『ちょろろっ・・・』 
(あ、あぅっ) 
一瞬の心の隙を突かれた加奈は、また少しチビってしまった。 
「はい、じゃあこれで終わります」 
「正座。礼」 
『ちょろっ』 
(あっ、あっ) 
もう、加奈のおチビリは何度止めても、すぐにまた始まってしまうようだった。 
パンツがかなり濡れてしまっているのが、はっきりと感じられる。 
だがこの後はもう、帰りの会をやって家に帰るだけだ。本格的なおもらしが始まる前に家にたどり着けば 
なんとかみんなにバレずにすむかもしれない。 
そう思って「大洪水」にならないよう、必死に耐えていた。 

ところが、6時間目が終わって15分が過ぎても、まだ加奈は教室の中にいた。 
他のクラスの子が帰っていくのを、加奈は廊下の窓越しにうらめしそうに見ていた。 
(なんで!? なんで先生が誰も来ないの!?) 
帰りの会はとっくに終わっているのだが、先生が来ないと帰るわけにはいかない。 
だが他のクラスの担任は当然ながら、まず自分のクラスの終礼からやっていたのだ。 
『じゅわわあっ』 
(またっ、ダメダメっ) 
この15分で、6度目のおチビリだった。1回のチビリで出てしまうおしっこの量も、多くなってきた気がする。 
これまで漏れてしまったおしっこは、防寒用のつもりで穿いてきたブルマとタイツが、 
ちょうどオムツのような働きをしてくれていて、まだ大きな被害にはなっていない。 
だがブルマもタイツも、もちろんその中のパンツも、今やおしっこでビショビショだ。 
これ以上のおしっこは、もう吸収してくれないだろう。 
実際、加奈のスカートのおしり側と押さえている前の部分には、すでに少しずつおしっこが染みだしていた。 
(もうチビっちゃだめ、これ以上もらしちゃったらバレちゃう) 
そうおチビリの度に思うのだが、限界をとっくに超えている加奈のおしっこは、もうこらえが効かなくなっていた。 

ガラガラッ 

やっと先生が入ってきた。来たのは給食の時間と同じ、3組の福田先生だった。 
福田先生は、日直に帰りの会が終わったことを確認して、すぐに 
「じゃあ、今日は終わりましょう」 
と言った。 
「起立ー」 
学級長の号令でみんな立ち上がった。加奈も、おしっこを刺激しないようにそろそろと立ち上がる。 
「気を付け。れ・・・」 
「ちょっと待ちなさい。上原さん! その格好は何ですか!」 
加奈は前かがみのへっぴり腰で太ももをすり合わせ、両手はスカートの前を押さえて立っていた。 
「ちゃんと気を付けしなさい!」 
(そ、そんなの無理だよ、もれちゃうよ) 
とはいえ、先生の命令を聞かないわけにもいかない。 
「は、はい・・・」 
と、両手を離して身体の横に持っていき、出来るだけまっすぐ立った。 
『ちょろちょろちょろ・・・』 
そんな加奈の隙を、満タンのおしっこが見逃すはずがなく、少しずつ加奈のパンツの中に溢れ出す。 
(あ、ああ・・・) 
とうとうブルマでも留まらなかったおしっこが、ひと筋、またひと筋とタイツを伝い落ちていくのがわかる。 

「気を付け、礼」「先生、さようなら、みなさん、さようなら」 

帰りのあいさつが終わると同時に、加奈はへたり込むように椅子に座り直した。 
『チュルルッ、チュッ、チュルッ』 
まだおしっこを完全に止められない。少しずつ途切れながら出続けていた。 
(ここで全部もらしちゃダメっ) 
スカートの前を押さえた両手に、今出たばかりのおしっこの温かさを感じた。 
その両手のまわりのスカートの布地に、じわじわとおしっこのシミが広がっていくのが見える。 
おそらくおしり側も、同じような状態だろう。 
なんとかおしっこを止めたときには、スカートには大きな「おもらしの証拠」が出来てしまい、 
白いタイツには、ごく薄黄色の筋が何本も走っていた。 

加奈は今、二つの選択肢を迫られていた。 
すぐに立ち上がり、おもらしがバレるのを覚悟で家のトイレを目指すか、 
目立たないように座っていて、みんなが帰るのを待ってからこっそりと学校を出るかだ。 
だが、かなりの量を漏らしてしまったとはいえ、まだまだ加奈のお腹の中には多量のおしっこが残っているし、 
中途半端に出てしまったおしっこによる尿意は、楽になるどころかさらに増していくようだった。 
このまま座っていたら、全員が教室を出てしまう前に、今度こそ椅子の周りに大きな水たまりを作ってしまいかねない。 
それにスカートの色は濃紺で、もしかしたらおしっこのシミはそんなに目立たないのかもしれない。 
意を決した加奈はそっと立ち上がってランドセルを背負い、教室の出口へと歩いていった。 

(う、うう・・・) 
一歩足を踏み出すごとに振動がお腹に伝わってきて、何度も廊下でおしっこがあふれ出しそうになった。 
前かがみになり、おしっこの出口を押さえながら内股で歩く。 
そんな加奈とすれ違った子達が、なにやらヒソヒソと笑いながら話している。 
加奈の仕草や歩き方、それにスカートに広がったシミを見れば、今加奈に何が起こっているかは明白だった。 
だが加奈には、そんなことを気にしている余裕は無かった。 
(もう、家まで間に合わなくてもいい。学校を出て、人のいないところでなら全部おもらししちゃっても・・・) 
そんなことを考えるようになっていた。 

昇降口には、外からの冷気が吹き付けていた。下半身を濡らしたおしっこが、加奈から体温を奪う。 
一秒でも早く学校を出たい加奈は、自分の下駄箱へと急いだ。 
(はやく、はやく) 
前を押さえながらなので、なかなか上履きが脱げない。 
モタモタしつつも、やっと上履きと靴を履き替えたときだった。 

ぶるるっ・・・ 

寒さと尿意で、加奈の身体が震えてしまった。そしてそれと同時に・・・ 
『しゅううううぅ・・・』 
今までのおチビリとは明らかに違う勢いで、おしっこが噴き出し始めた。 
(やだやだ! まだ待ってよお!) 
とっさに、押さえていた手に力を込め、足をバタつかせて、必死に流れ出るおしっこを食い止めようとするのだが、その勢いは増すばかりだった。 
『しゅるしゅるしゃあああ・・・』 
そしてとうとう、加奈の足をおしっこが伝い落ち、足元に水たまりを作り始める。 
「だめぇ~~~~っ!!」 
と、思わず大声で叫んでしまった。 
その様子と声に、周りの子達が何事かと加奈のほうを注目する。 
そうこうしているうちにも、加奈のおしっこはスカートを完全にビショビショにし、靴の中にも入り込み、 
足元のおしっこの水たまりは、ものすごい勢いで広がっていった。 

いっしょうけんめいガマンしてきたおしっこは、結局全部出てしまうまで止まることは無く、 
下駄箱の前に大きな水たまりを作って、加奈のおもらしは終わった。 

「2組の上原が、おもらししたー!」 
男子の叫び声に、呆然としていた加奈はハッと我にかえった。 
そして、『おもらし』という現実を再認識し、同時に涙があふれてきた。 
「え、うそー? 3年生にもなって・・・?」 
「加奈ちゃん、かわいそう・・・」 
加奈のおもらしを見ていた周りの子達が、遠巻きにヒソヒソとしゃべり出す。 

加奈は一刻も早くその場から消え去りたくて、家へと駆け出していった・・・。


(続く)