何度も漏れそうになりながら必死で押しとどめて来た百合子
部屋のカギを開けるのももどかしく
土足もおかまいなしで待ちに待ったユニットバスめがけまっしぐら
日付が変わっての帰宅
昼過ぎからの長すぎる辛抱が
ついにむくわれる解放
濃い黄色が洗面器を渦巻いて満たしてく 

女友達数人との日帰り強行ドライブ
早朝の眠気ざましのコーヒーは
昼過ぎの百合子の膀胱で
十分過ぎる重さに変わった
尿意に悶える女数名
ルートにトイレのあてがない
ガソリンスタンドで裏切られ
やっと見つけた商店で断わられ
路肩での誘惑だけはかろうじて振りきって
沿道の喫茶店でようやくトイレに巡り会う


たまりにたまったオシッコを前に
注文もそっちのけではじまる順番争い
あきれてしばらく注文を待機するマスター
午後3時過ぎ
人心地をとりもどした女数名
しばし休息、ドライブ疲れと我慢疲れを癒す 

百合子は密かにオシッコ我慢が好き
尿意に混じる快楽や、我慢のすえの解放感も嫌いではないが
オシッコ我慢の記録を残すことが何より好きだった
記憶をたどれば即座にいくつか思い出せる
199X 幼稚園のとき  春のピアノの発表会 初の会場と本番の不安でトイレに立てなかった 
199X 小学5年生のとき 学校でわざと一度もトイレに行かずにいられた中で一番つらかった冬の日
199X 中学1年生のとき デート中飲んだ大型コーラ等々の猛攻に帰宅まで耐えぬく
200X 大学1年生のとき 一人暮らしで計量に耽る日々 酔いと我慢の両立に成功した最高記録1000突破の夏
200X 大学2年生のとき 花見の二次会を途中で帰って達成した、現・自己ベスト1310


忙しくなり、故意のオシッコ我慢に耽ることから
いつしか遠ざかっていた百合子
久々に本格的なオシッコ我慢と再開
故意でない自然な状況
まちがいなく、今後今日の我慢のことは思い出すだろう
喫茶店のトイレの便器を目前にして
みんなの頭にあったのは
「オシッコしたい」という強い想い
百合子の頭には
「はかっておきたい」という強い想い 

百合子は久々すぎる本格的な我慢に魅せられ
トイレで後者の想いを取ってしまった
はかるには、場所や道具が必要で
百合子はこのためとうとう今日一日
一度もトイレを使わずに耐え抜くことになったのだ


もらしてしまっては台無しだ。はかれる時まで無事を保ってなければならない。
すでにピンチの百合子
過去のオシッコ我慢の記憶で自分を勇気付け
はかれる時まで数時間は先のはずの
それまでのオシッコ我慢に壮絶な覚悟
不本意なアイスティーを笑顔を装い流しこむ 

トイレが遠い
百合子にとって、オシッコをはかれないトイレはトイレではない
一人だけ限界間近の尿意を隠したまま
誰にも言えない孤独な戦い


夕食はレストランで4時間ぶりのトイレ
もうどうしてももちそうにない百合子は空のペットボトルをこっそり持ちこむ
全部でなくても、せめて一部だけでも
下着を脱いでボトルの口をあてがう
駄目だ
これまでの経験で、八割方はこぼしてしまうことが予想できる
あきらめてトイレを出る百合子
もう我慢できない
早く自室のトイレに
ドライブ先 すぐには帰れない
少しでも早く出発を
レストラン 食事はこれから
隠すのがだんだん無理になる
発言が投げやりになってくる
百合子は疲れが出たとごまかす 

食事が済んでも誰も急がない
みんなはここでもトイレをすませて
あわてる理由は何一つない
百合子はオシッコ時間の時間で自己ベストを上回りそうだと思う
今まで時間は重視してきてなくて
長時間といえばせいぜい
学校でオシッコしない、出先でオシッコしない、の時の副産物
もらしてしまったらせっかくの記録がだいなし
それだけを支えに、トイレを意地でも使わない百合子


帰り道。来た道と同じく
トイレのあてがない
頼みの綱の喫茶店が閉店時間
ディナーの水分がこたえる
再び我慢大会の様相を呈する車内
人知れず、もっと長く、もっと辛い我慢をしている百合子
おおっぴらに仕草に出せるのが唯一の救い
どうせトイレを使わない百合子には
トイレに立ち寄るタイムロスがない分
自室のトイレに帰るのが少しでも早まるのがもうひとつの救い 

とはいっても
みんなの総意はトイレ探し
かなり近場に帰ってくると
時刻はもう夜中
目当てはコンビニかファミレスか
ファミレスになってしまった日には
すぐ帰るわけにいかず
タイムロスが大きすぎる
コンビニを強く勧める百合子だが
大の女が数人もゾロゾロとトイレを借りる図はないだろう、と
結局ファミレスへ


涙をしのんですませたフリを繰り返し
破裂寸前の膀胱をかばいながらおしゃべりに相づち
翌日の仕事を理由に、どうにか早めに切り上げさせる 

ここまで帰ってくれば、あとは自室まであとわずか
そうはいかない
家までの送迎の順を考えると
百合子の家に回るのはあとのほう
受け答えするのがせいいっぱい
人数が一人減り二人減り
シートを一つ独占できるようになると
自然を装ったつもりで両脚交差、すりあわせ
ミラーで気付かれ
友人がトイレのためにコンビニに寄る提案
早く帰る方がいいと主張するも
友人たちもコンビニに用がある


コンビニで降りる一歩
どうとう百合子の下着に熱さが広がる
どんなつらい我慢でも
自己ベストの1310のときでも
ちびったことのなかった百合子
とうとう限界
もう一歩降りるまでに、さらに熱さが広がる
ひざの力が抜け歩けない
パニック 

おしっこは食いとめたが、冷や汗もひどい
両方から支えられて病人そのもの
使用許可も友人がとり
トイレまではこんでもらう


中では
せっかくあと一歩で自室に帰りつける
ここまでの思いをしていながら
はかるのをあきらめたくない百合子
ジーンズを脱いでしまうとはく労力に耐えられそうになく
ここは脱がずに両手押さえで波をやりすごす 

何度も漏れそうになりながら必死で押しとどめて来た百合子
部屋のカギを開けるのももどかしく
土足もおかまいなしで待ちに待ったユニットバスめがけまっしぐら
日付が変わっての帰宅
昼過ぎからの長すぎる辛抱が
ついにむくわれる解放
濃い黄色が洗面器を渦巻いて満たしてく


この日のオシッコ我慢は
百合子の膨大なオシッコ我慢の記憶と記録の中でも
特に強く焼きついたに違いない